地底70m!まるで洞窟!?現役なのに廃墟感が凄い「土合駅」
日本一のモグラ駅「土合駅」
ある日の事、私は人生に疲れ果てていた。
「いっそ深い土の底の土竜にでも・・そうだ土竜がいい。
土竜だったら深い土の底に、潜っていればいいから、なんの心配もありません。
深い土の底だったら仕事もない、格差社会に心折られることも無い。
妻や息子のこと事を心配することもない。
どうしても生まれ変わらなければならないなら、私は貝…いや土竜になりたい…」
といった想いが心の中でリフレインする。
あくる日私は、気が付くと電車に乗っていた。
目を開けると薄暗い闇の中「湯檜曽駅」の文字が浮かび上がっていた。
「ゆ…び…そ…?」
一体ここは何処だ…
電車を降りようと思った瞬間、列車が動き出す。
しかたなしに私は、次の駅で降りた。
ここは…駅?
まるで秘密基地のような雰囲気だな。
変った形のホーム。
待合所のような場所。
しかし列車を待つ人など誰もいない…何なんだここは…
駅のホームを見渡すが、人気はまるでない…
本当にここは、日本なのか?それとも異世界なのでは…
幻想的な雰囲気に心が奪われていく。
しばらくしてここが日本の駅だという現実に引き戻された。
看板に書かれている文字を読む。
「日本一のモグラ駅だと…」
もぐら…モグラ…土竜…
どうやら土竜になりたいと、思いを馳せていたばっかりに、無意識のままこの地へといざなわれてしまったようだ。
確かに…土竜になりたいと思った。
さっきの待合所の様な小屋で、一生をここで終えるのもありかもしれない。
しかし私は、ここにきて思った。
「やはり人間でいたい…妻や子に会いたい」と。
ならばと、外の光へと続く階段を駆け上がった。
上りだして直ぐに、あまりにも急勾配の階段に「エスカレーターが有れば良い」と切に思った。
階段の端には、エスカレーターの設置スペースが確保されていたが、はるか昔に時は止まり、むき出しの地面に水が流れている。
トラップ?
途中怪しげな扉が、いくつも待ち受けている。
階段に疲れ、人生に疲れ、この扉へと飛び込んでしまったら、きっと土竜として一生をここで終える事になるのだろう…
途中、湧き出る水で顔を洗い、口をゆすぎ、休息をとる。
喉が渇いていたが、この水を飲んでしまったら土竜としての人生が待っていそうなので思いとどまる。
その後、どれ位の階段を上った事だろうか…永遠を思われた階段のゴールが見えてきた。
やっと外に出れる…私は最後の力を振り絞り駆け上がった。
しかしそこは、まだ出口では無かった…。
長く続く怪しい不気味な通路…
錆びれた文字。
しかしその雰囲気は、とても美しい。
まるでSFの世界に迷い込んでしまったようだ。
まるで廃墟のように自然との一体化を図る蛍光灯。
しかし、その光は未だ強く発している。
なんという神々しい光。
私に生きていく活力を与えてくる。
さらに奥へと進んで行く。
まだまだ長い通路が続く。
本当に出口はあるのだろうか…俺は人間として無事外の世界へと出れるのだろうか…
不安を押し殺し突き進んで行くと、やっと改札が見えてきた。
改札の手前に待合所がある事に気が付く。
覗きこんでみたが、誰もいない…
時が止まってしまったのか…はたまた私以外の人類は滅亡してしまったのだろうか…
私は恐る恐る改札から外へ出た。
まばゆい光が差し込んでくる。
しかし人っ子一人いないな…
もしかして私は天国への階段を上ってきてしまったのかもしれないな…
土竜になんてなりたいと思ってしまったばっかり…輪廻転生する羽目になってしまったのかも…
駅から外へと出てみた。
そこには壊れた小屋があるだけだった…誰もいない…
SEKAI NO OWARI…絶望…
俺は走り出した。
振り向く。
土合駅…
俺はスマホを取り出しアプリを押した。
Yahoo!路線情報。
2分後だと…
それを逃したら2時間以上列車は無い…
「くそがっ!」
俺は急いで駅へと戻る。
改札を潜り抜ける。
2番線…
右か!
通路を、颯の如く駆け抜ける。
扉を開けホームへと急ぐ
ホームへと着くと同時に列車が来た。
これで帰れる。
妻と子の元へ…
良かった…
土竜になりたいなんて思うんじゃなかった…
明日からは人間としてしっかり生きて行こう。
そして切に思った。
「今日の夕飯は、ペペロンチーノにしよう」と…