漢方薬専門店なのに蛇料理が食べられる店「文久堂」

御徒町にある「文久堂」
肉。
あらゆる種類の肉。
牛、豚、鳥、猪、鹿、熊、鰐、兎、etc…
それを食すのは、男としての至福の喜び。
止められぬ欲求。
まだ見ぬ境地への扉。
肉という肉に食らいつきたい。
俺の頭の中は、肉肉肉肉の事だらけ…
あの日も、そんな気分で俺は御徒町を歩いていた。
ふと目に飛び込んでき「まむし料理」の文字。
ま…む…し…だと!?
俺は、はやる気持ちを抑え路地を曲がった。
蛇が入った籠が店先に置かれている。
「蛇の肉か…」
食べずにはいられない。
押し寄せてくる欲求。
一体どんな味がするのだろう…
未知との遭遇。
どうする?入るか?
「ええい、ままよ!」
俺は店内へと入り席へと着いた。
緊張が店主へと伝わらぬよう、平静を装い壁紙のメニューを見る。
シマヘビ 蝮 ハブ
6000円 6000円 7000円…
「なっ!7000円だと…た…たっけ――――――――――」
おいおい7000円ありゃ上等な牛食えんじゃねーかよ…
血液のみだと6500円…
肉の値段は500円かよ…肉だけってわけにはいかねーよな…
どうする…
店主の視線が突き刺さる…
今更出れん…
「まっまむし…下さい…料理付きで…」
俺は声を絞り出して答えた…
諦め…落胆…期待
複雑な感情を押し寄せてくる。
注文すると同時に蝮を捌きだす店主。
すぐに蝮の生血が出てきた。
ゴクリと生唾を飲み込み。
一気に生血を飲み干す…
「これは!うまい」
濃厚な赤ワインのようだ。
体中が熱くなる。
たぎる!
「飲みやすいでしょ!赤ワインで割ってありますから」
「…」
店主の言葉と同時に肉料理が目の前に置かれた。
蛇の肉は骨が多くそのままだと食べずらい為、叩いてミンチにして食べやすくしてある。
ミンチにした肉を秘伝のタレで炒めたようだ。
美味そうだな。
一体どんな味がするんだ蛇の肉は。
押し寄せてくる好奇心。
いざ未知の領域へ。
うまい!
臭みは無い。
というかタレが美味い。
ほぼタレの味。
ご飯が食べたい…
何ならこのタレであらゆる肉を炒めたい…
食べ終わると最後に余ったタレをお湯で割ってくれた。
蕎麦湯ならぬ蛇湯。
粋だな…。
何やら活力がみなぎってきたな。
これが蛇の力か。
そして俺は強く思った。
「今日の夜は、久々に大蛇丸似の妻とバトルだな…」
と…