戦争でデスマスクのようにされてしまった悲しき上野大仏
上野にある上野大仏
大きいモノに人々は、昔から魅了される。
大きければ大きいほど、偉大さ、神々しさを感じる。
日本各地に巨大な観音、巨大な大仏が鎮座している。
ある晴れた日、ほろ酔いで上野を散策していた時に、そいつに出会った。
当時、まだやっていた桜木亭のパンダ支店でビールを買い。
ビール片手に上野を散策。
木々の木陰に身を隠し、心地よい夏の風を感じながら1杯2杯と飲みすすめほろ酔い気分になった時だった。
合格大仏の文字が視界に写り込んだ。
大仏?はて上野に大仏なんてあったっけ?
俺は酔っぱらっているかなと目をこすり奥の方に視線をやった。
そこにはハッキリと「上野大仏」と書かれていた。
う…え…の…大仏だと!?
知らなかった…上野に大仏があったなんて…
無類の巨大な物好きの俺は震えた…
一体どれ位の大きさなのだろう…
俺は視線を上にあげた。
しかし其処にはパゴダしかない…えっパゴダ…なぜ…大仏は!?
頭の中がパニックになる。
俺は階段を駆け上がった。
正面にはパゴダ…大仏は何処だ!
辺りを見回した。
そこには驚愕の光景が…
ひゃ…な…なんという無慈悲なお姿に…
そこには、デスマスクのようにされてしまった巨大な大仏様のお顔があった…
どういう事なんだこれは…
大仏様のお顔元を良く見ると、立派な昔の姿のお写真が飾られていた。
一体何故…誰が…何のために…
あまりにも無残な姿に、俺は絶望に伏した。
どうやら戦時中に金属供出令により、お国の為に青銅のお体を献納してしまったそうだ。
なるほど…国民を守る為にお体を供出して下さったんだな…まさに…神。
良く見ると、無慈悲なお姿にされてしまっているのに、大仏様は慈愛に満ち溢れた笑顔をしていた。
しかし何故合格大仏なのだろう…と調べてみたら
「顔だけなので、 もうこれ以上落ちないという」事らしい…
自虐…ぱね―――――――――…
感極まった俺は、涙を流さずにはいられなかった。
素敵な笑顔だぜ…
俺は手を合わせ、大仏様の体が元通りになる事を願った。
そして帰り道思った。
「カドクラで飲み直しだな」と