7種の肉を食す「袋鼠 鴯鶓 鰐 鴉 兎 駝鳥 蠍」/新宿「パンとサーカス」
新宿「パンとサーカス」
肉を喰らう事、すなわち男の本能。
あらゆる種の肉を喰らう事、それは男の欲望。
肉それは、まだ見ぬ美女との戯れ。
枯渇した気持ちを潤してくる高貴な食物。
それが「肉」。
数年前の事、新宿で、色々な生き物の肉を提供している店があると友人から聞かされた。
色々な肉!まだ見ぬ、肉達が食べれる喜びに、俺は身震いした。
しかし当時あった7種の肉を食べれるコースは、4人のパーティーを揃えないとイベントが発生しないと知る。
俺は、肉仲間の面々に声をかけ新宿へと向かった。
新宿で、合流した我々は、店へと向かった。
たどりついた店は、禍々しい扉で閉ざされていた。
怪しい外観に、足が竦む。
しかし、肉を食べたい欲求が、我々の背中を押す。
勇気を、振り絞り禍々しい扉を開けた。
店内へと入る。
其処は、さらに怪しい雰囲気に彩られていた。
田舎者の我々には、あでやか過ぎる…
場違いな気がして、恥ずかしさが、こみあげてくる。
しかし多種の肉を食べたいという欲求が恥ずかしさを抑え込む。
席につく。
フォトジェニックな店内。
お洒落で怪しい都会の雰囲気。
席には場違いな田舎者の我々。
異様な光景。
高まる高揚感は、肉への欲求なのか、この状況で、辱めを受けた気分だからなのか、分からなくなっていた。
「落ちつけ、慌てるんじゃない…一見さん…」
俺は、そう自分に言い聞かせる。
そしてビールを頼み気を落ち着かせた。
「さぁパーティーの始まりだ!」
俺は仲間へ力強く言い放った。
最初に来たのは、エミュー肉のサラダ。
エミューは、確かダチョウに似ているが、ダチョウより小さい感じの鳥だったな。
早速食べてみる。
鶏肉だな…
普通に美味い。
続いて来たのは、カンガルーカルパッチョ。
カンガルーか!
これは期待大だな。
パクチーと一緒に頂き。
パクチーが乗っているので臭みが強いのかと思ったが、臭みも無く美味い。
牛肉に似ている感じがするな。
お次はワニ!
徐々に野性味がおびてきてな。
肉の種類と共に、我々のテンションも上がり出す。
皆、野生化しだし肉に、むしゃぶりつく。
美味い!
かなり脂っぽいが鶏肉に近い味だ。
そして、ワニが自分の血となり骨となる快感。
最高。
そして兎の丸焼き。
鰐を喰らい、完全に頂点捕食獣となった、我々の前では御馳走以外の何物でもない。
一斉に、兎に襲い掛かり、むしゃぶりつく。
美味い!美味い!美味い!
もはや肉の味など、どーでも良い。
「肉を、もっともっと食わせてくれ!」
自分達が、田舎者だと恥ずかしがっていた気持ちなど、遥か彼方に吹き飛び、我々は肉に一喜一憂し叫んだ。
そしてカラスの丸揚げが投入される。
食べる肉の部分は薄く、骨が多かったが、もはや我々には骨までもが、御馳走だ。
骨ごと食べる。
美味い。
上がるテンション。
そして最後に、ダチョウ肉のカレーが来た。
そしてその上には蠍の素揚げ。
俺は、真っ先に蠍へと手を伸ばし食す。
美味い!
極上の海老そのものだ。
そしてカレーを食べる。
しょっぱい…しかしクセになる。
一気にカレーと米を、口にほうばりビールで胃に流し込む。
ダチョウの塩分が、ビールのピッチを上げる。
最高!
7種の肉を全て平らげた。
満足。
頂点捕食獣と化した我々は、次なる獲物をもとめ歌舞伎町の歓楽街へと消えて行った。