V字踏切の先にある名前の無い弁当屋/池袋300円弁当
池袋300円弁当
弁当屋…
それは、男の欲望を刺激する店。
コスパの良い弁当屋…
それは神。
弁当屋との出会い…
それは運命の悪戯。
ある晴れた日、俺は池袋にいた。
西武線沿線を歩き、踏切を渡った。
異変を察知する。
「何かおかしい」と、振り向く。
すると、道が二股に分かれており、V字の形に踏切が設置されていた…
これは、なんとも奇怪な…
俺は来た方とは、逆の道へと歩き出した。
視界の先には、先程通ってきた道。
これはいい…中々面白いな…
変った踏切に、気を良くし気分上々に、踏切を渡る。
すると直ぐに、怪しい店が視界に飛び込んできた。
店先には、赤いコーン…
店名らしきものは無い。
焼肉弁当300円オムライス300円と書かれた看板が掛けられており、かろうじて店だとわかる。
パッと見は、潰れた飲食店の様だ。
しかし、ドアには、営業中の文字…
本当に営業しているのか?
普段なら完全にスル―するが、V字踏切により、気分が高揚していた。
俺は、思い切って店の扉を開けてみた。
店内へと入る。
ざっくばらんに置かれた椅子…荒れた店内が視界に飛び込んできた…
やっぱりやってないのか?と思った瞬間、厨房の奥から男の声で「焼肉?オムライス?」と聞かれた。
俺は、声がした厨房へと視線を向けた。
亭主らしき男。
調理をしている…
「焼肉でお願いします。」
俺は、男の問いに答え椅子へと座った。
目の前のカウンターには、何故かカップラーメンが、山住に置かれている。
男が、フライパンで炒める肉の音だけが響き渡る…
食欲をそそる、肉の匂いが店内に充満しだし鼻を突く。
なんという異空間…
壁紙へと目を向ける
カップ麺セットだと…
売り物だったのか…
カップ麺セット…
何て男心を、くすぐるワードなのだ…
ここの亭主出来るな…
期待で胸が膨らむ。
カップラーメンに唖然としていると、弁当が出来上がった。
カップラーメンを買おうかと迷ったが、お湯が無い事に気が付き辞めた。
俺は、男に300円を渡し、弁当を受け取った。
俺は、近くの公園で弁当を食べる事にした。
ビニール袋から出し、驚愕した…
何て美味そうなんだ…
俺は肉を口へと放り込んだ…
美味い…
何という美味さ…
大量のモヤシが入っているが水っぽくなく、肉とタレが良く絡んでおり米との相性はバツグン。
「これは…300円ってレベルじゃねーぞ…」
俺は、そう呟き肉とモヤシを頬張った。
そして、卵の黄身へと箸をやった。
溢れ出る半熟の黄身。
ご飯と肉とモヤシに絡み合ってゆく…
完璧な黄金比率…
最高…
俺は、この至高の料理を腹一杯になるまで楽しんだ…