秋刀魚 鰯 鯛 魚の形をした変わった鳥居/銚子 長九郎稲荷
銚子 ちょぼくり稲荷こと長九郎稲荷
銚子…
それは、俺の生まれ故郷。
寂しい風の吹く街。
郷土愛。
この少し変わった街を、俺は愛している…
富士山のような高地や離島を除く日本国内で、元旦の初日の出が一番早く拝めると言われている犬吠埼。
しかし、それよりも南に位置する岬「長崎鼻」。
こここそが、本当の最も早い初日の出を拝むことができる場所だ。
小さい頃は、「長崎鼻」の丘の上にある小さな稲荷神社で、毎年初日の出を見ていた。
数年前、 帰郷した際に、子供の頃の記憶を頼りに「長崎鼻」へと俺は向かった。
思い出の丘へと着くと異変に気が付く…
あれは何だ……
何やらデカい魚のような物があるな…
胸がザワザワと騒ぎ出す。
丘を駆け上ろうとした。
しかし、私有地立ち入り禁止の看板が…
小さい頃は、ここから行けた筈だったんだけどな…
間違いない…丘の上で何かが…起きている…
俺は、裏手から丘の上へと登った。
野道が森へと続いている。
森の手前には鳥居。
鳥居の奥へと進む。
荒れ果てた道
そして、森を抜けると驚愕の光景が視界へと飛び込んできた。
あれは…いったい……
俺は、神社へと駆け寄った…
思い出の小さな神社があった場所。
其処には、怪しい魚の鳥居が建っていた。
いったい…だれが…何のために…こんな…
胸がざわつく…
小屋の脇に、昔の神社の名残が残っていた。
昔、祠に納められていたお稲荷様達が寒空にさらされている…
そして上を見上げると、怪しい鯛の鳥居…
俺は、正面へと回った…
秋刀魚…
鰯…
鯛…
異形の鳥居…
異様な空間…
胸のザラつき…
郷土愛…
いったい…こりゃ…どうなっちまったんだ…
鳥居の奥の長九郎稲荷と書かれた小屋…
遠い昔の記憶をたどる…
神社の名前は確かに長九郎稲荷だった気がするな…
しかしこんな小屋じゃなかった気がする…
異形の鳥居を潜り、小屋へと近づく。
風化してボロボロの看板…
ご案内とお知らせと書かれた文字の下に
「今までの●●さん方とは一切関係ございません」と書かれている。
さらにその下には携帯番号…
いったいどういう意味だ…
そして鯛の鳥居の絵の所には珪脳神の文字。
消えかけて良く読めないが、なんちゃら医科学学会と人の名前が書かれている。
医科学…と神社…??
リフォーム??
ビジネス…??
リニューアル…???
何か他に手がかりは無いかと、辺りを見回した。
神社の由来が書いてある看板が倒れている…
珪素神宮の文字…
長九郎稲荷じゃないのか…
珪素神宮…
先程のなんちゃら医科学学会と関係あるのか…
いったい長九郎稲荷神社に何が起きたんだ…
ただリニューアルしただけなのか?
胸騒ぎ…
さらに、視線を奥へとやると…
あれは…鳥居?
黄金…
俺は、鳥居へと走って近づいた。
何なんだこの異形の鳥居は…
しかも足元には足跡…
目の様にも見える…
感じる狂気…怖い…
全身を駆け抜けるヤバい感じ…
鳥居をぬけると赤い階段があった。
その先は神社の横にあるホテルへと道が繋がっていた…
確かこのホテルは、口コミを見る限り…
このホテルと異形の姿に変ってしまった神社…
何か関係があるのか…
背筋に冷たい物を感じる…
何もわからない…
わかるのは、神社の姿が大幅に変わってしまったという事実。
受入れろ…俺。
帰り際、金色の鳥居の神社名を確認すると長九郎稲荷となっている。
いったい珪素神社と長九郎稲荷どっちなんだ…
しかし、改めてここから見ると素晴らしい神社な気がしてきたな…
あまりの変りようにさっきまでは、心が付いて行かなかったが、落ち着いて見れば悪くない…
古い神社だったし、きっと綺麗にリニューアルしたのだろう…
郷土愛…
少し、姿は変わっちまったが、思い出の長九郎稲荷神社同様この地を愛して行こう。
また毎年、初日の出を、息子達と綺麗になった長九郎稲荷に観に来ようと胸に誓った。