絶滅危惧店「牛丼太郎」最後の店舗/茗荷谷「丼太郎」こと「どんぶり太郎」
茗荷谷「丼太郎」こと「どんぶり太郎」
牛丼それは、俺のソウルフード。
青春時代、いつも俺の隣にいた…
24時間、牛丼の事を考えていた、あの頃…
時代は、牛丼デフレ戦争真っ只中だった。
そんな時、俺の胃を、がっちりキャッチしていたのが牛丼太郎…
そのお値段200円…
圧倒的パワーでデフレ戦争を制したかと思えたが…
やはり其処は、200円…
諸刃の剣…
薄利多売…低価格化に伴いサービスは低下していき客は離れて行った…
そして、追い打ちをかけるように2003年、BSE問題により米国産牛肉が輸入できない事態となる…
都内を中心に13店舗あった牛丼太郎だったが…どんどん店舗が減って行ってしまった…
俺、行きつけの新宿店も、その頃に閉店してしまい、俺は牛丼太郎から足が遠のいていった。
いつしか牛丼太郎の存在を忘れていた。
そして、2012年に風の噂で聞いた倒産…
もう牛丼太郎は食べれないのだなと、その時俺は思った…
しかし、俺は再び牛丼太郎と出会う事になる
先日、茗荷谷の街を歩いていた時の事。
突然視界に入りこんできた牛丼屋…
こっこれは…どういう事だ…
我が目を疑う。
パニック。
倒産したと噂に聞いていた牛丼太郎が有るではないか…
近づき看板を見る。
牛の文字が剥がされているが、あの金太郎のようなキャラクター。
居抜きで、他の業者が牛丼屋でもやっているのか??
しかし次の瞬間、視界に入りこんできた牛丼太郎の鉄板メニュー
納豆丼…
俺は確信した。
間違いない牛丼太郎だ。
店内へと駆け込んだ…
逸る気持ちを抑え食券を買う。
席に着き店員へと食券を渡す。
15年ぶりの牛丼太郎か…
高鳴る鼓動を俺は、はっきりと感じた。
待ちわびる…
1秒がとても長く感じた…
気が落ち着かない…
俺は、おしんこと、ビールを頼んだ。
おしんこをつまみ、ビールで流し込む。
気を落ち着かせる。
そして時は来た…
丼ぶりにはマスコットキャラ
間違いなく牛丼太郎だ…
玉子をかけ、紅ショウガと七味で彩り、胃へと牛丼を放り込んだ…
15年ぶりの再会…
思い出の味…
胃から記憶が蘇る…
脳が刺激される。
金が無く、朝昼晩晩と牛丼太郎を食べた毎日。
食べ過ぎて胃もたれしていた、あの頃。
それでも食べ続けた牛丼太郎…
頬を涙がぬらした。
うまい…
言葉が口からこぼれた…
しかし、厨房へと視線を向けた時…
俺は、驚愕の事実に気が付いてしまう…
厨房の奥、壁に貼られていたメニュー
そこには、どんぶり太郎と書かれていた…
牛丼太郎じゃない…
俺は、箸を落とし唖然となった…
偽記憶…
馬鹿な…この味…間違えようがない…
パニックが俺を襲う…
俺は、恐る恐る店員に問いかけた…
「あ…あの…ここは、牛丼太郎じゃないのですか……?」
その言葉を聞き店員さんは、ニコリと笑った。
そして、これまでの経緯を話してくれた…
倒産前の2012年8月に、当時従業員だった現店員の有志数名が別会社を設立。
代々木店と茗荷谷店の2店舗を、牛丼太郎から譲渡して貰い「丼太郎」と店名を変え営業を続行…
そして、代々木店は、賃貸契約が切れるタイミングで営業を停止した。
丼太郎茗荷谷店は、名前は変わったが、牛丼太郎最後の生き残り店舗という事だった。
俺の知らない15年に色々あったんだな…
そして15年ぶりの再会…
感慨深い…
どんぶり太郎に乾杯。