メニューに価格表示の無い無骨な焼き鳥屋/柏 太平楽
柏 唐揚げの有名店 太平楽
柏で仕事を終え家路に帰る途中。
駅へと向かう裏路地で一軒の焼鳥屋が視界に入ってきた。
良く燻され年季の入った佇まい…
気になるな…
しかしこういう感じの店は、一見だと入りずらいな…
どーする…
ここで行かないと苦手意識が付いて二度と行かない気がするな…
ここはひとつ冒険するかな…
俺は、勇気を振り絞り扉を開けた。
店内は満席…
カウンターの一番手前…
焼き場の前の1席だけ空いていた…
俺は、ラスト1席へと座った…
ラッキーだったな…
壁にあるメニューに視線を合わせる…
その瞬間、俺は驚愕した…
メニューは少なく、しかも値段が書いていない…
どういう事だ…
まいったな…注文しずらいな…
俺が困惑している横で、バシバシ注文していく他の客。
その背中は、値段なんか気にせず頼めよと訴えかけているようだった。
くっ無骨でかっこいいじゃねーか…
粋じゃなかったな俺…
押し寄せてくる自己嫌悪。
俺は、自己嫌悪を振りほどき、大きな声で注文した。
焦って一度に一気に注文しようとしたが、ビールと御新香を注文した所で、店員のおばちゃんに「はーい」と注文を遮られた。
まるで「落ち着け落ち着け慌てるなよ」と言われいるようだった。
注文するタイミングを完全に外してしまった俺は、呆然としビールを待った。
ほどなくして、おばちゃんがビールが持ってきてくれた。
これは…美味そうな漬物だな…そして瓶ビールアリだな…高まる高揚感…
そのタイミングで「どーします?」と聞かれた。
俺は、落ち着いて注文をした。
唐揚げと、串ものを数本頼んだ。
漬物を、アテにビールを胃に流し込み、から揚げを待つ。
飛び交う客の注文。
そして、注文を受け一言も声を発さず、黙々と無骨に鶏を揚げ、串を焼く店主。
目の前の焼き場のライブを眺め酒を飲む。
焼き場の光景に、胃が刺激される。
さらには、脳味噌からもよだれが出てくる。
しかし、注文を受けてから1人前ずつ揚げるているのか、中々俺のから揚げは来なかった…
そして、待つ事30分…もしかして注文入ってないのかな、と不安になったタイミングで、ちらりと店主が俺のテーブルを見た。
次の瞬間、揚げたての、から揚げが俺のテーブルへと提供された。
ちゃんと注文聞いていたんだ…
プロだな…無骨な店主が、サムライに見えてた。
視線を、唐揚げへと向ける。
こっ…これは…なんと美味そうなんだ…
こんな、美味そうな唐揚げは、初めてだな…
この塩と七味と胡椒らしきものがまざった薬味も美味そうだな。
美味そうなビジュアル、そして匂い…
空腹の胃を刺激する。
俺は、唐揚げにムシャぶりついた。
う…うまい…
しかも色々な部位が入っている。
胸肉っぽい箇所。
これも美味い。
そして手羽の部分。
俺は、あまりの美味さに一気に唐揚げを平らげた。
色々な部位があってKFCみたいだな…
しかし…これは…あれだ…KFCより全然美味いぞ…
その時、一瞬頭を過った「って事は、お高いんでしょ…」
こんだけ美味いとなると最低でもKFCよりは高そうだな…持ち金足りるかな…不安…
そう考えると喉が渇く…
俺はビールを一気に煽った。
ビールは無くなったが、これから串ものが来る…
どーする…
考えていると、視界に焼酎のメニューが入り込んで来た…
佐藤の黒あるのか…
しかし値段はやはり書いてない…
たけーのかな…佐藤だもんな…けど飲みてーな…
ええいままよ…
俺は、佐藤の黒を注文した。
コップに、なみなみと注がれた焼酎。
この量…高そうだな…
そう思いながら一口焼酎を口に含む…
うまい…
俺の不安をかき消すような優しい味わい…
酔いが回る…
思考が鈍り出す…
そして続々とテーブルに置かれる串もの…
すべて美味そうだな…
串ものにがっつく…
うめー…
酒が進む…
佐藤を追加する…
佐藤を楽しみながら…
串をつまむ…
至福の時間…
そして食事は、いつしか終わりを告げる…
完食…
かなり楽しんでしまった…
値段が気になる…
俺は、不安にかられながらチェックした。
お会計…5000円でお釣りが出る…
安い…
無骨で粋な焼き鳥屋だったな。