立ち食い寿司を粋に喰らう/船橋 吉光
船橋 吉光
寿司…
江戸時代からある日本のカルチャー
当時は江戸のファストフード。
スタイルは立ち食い。
せっかちな江戸っ子達は、ササッと食ってサッと粋に立ち去るスタイル。
そんな粋な立ち食いスタイルの店が未だ日本に点々と存在する…
船橋で、一仕事終え駅に向かう途中だった。
視界に入りこんできた良い感じの店…
立ち飲み屋?
俺は足を止めて店内を覗きこんだ…
店内は人で賑わっている。
皆、手で何かをつまんで食べているようだ。
ドアの貼り紙に書かれたメニューに視線をやる。
上鮨…
おまかせにぎり
まぐろづくし…
これは…寿司屋…
しかも立ち喰い…
シブい…渋すぎる…
俺は吸い込まれるように扉を開けた。
店内に入るとお茶が出された。
勝手がわからず店内をキョロキョロ…
壁のメニューと睨めっこしていると…
店員に「今日はどうします?セットにしときますか?単品にしますか?」と聞かれた。
俺は、咄嗟に「おまかせの1.5人前でお願いします」と答えた。
少し声がうわずった…
お茶を飲み気を落ち着かせる。
しばらくして先発隊の7貫が、目の前に提供された。
箸は無い…
あるのは、カウンターに設置された蛇口。
回る寿司屋では、お湯が出て茶を作る為に付いている。
しかし立ち食い鮨は、ここで手を洗い手掴みで食べるようだ。
シブい…
手づかみ…小さい頃はいつだって手で食ってたな…
いつからだろう…箸なんかでお上品に食うようになっちまったのは…
俺はしんみり思った。
感傷に浸りながら、俺は寿司を手でつかんだ。
醤油にサッとつけて、口へと頬張る…
うめー…くっそうめー…
ぶっきらぼうに立って手掴みで寿司を食う…自由だ…心が解き放たれていく…
俺は、ガツガツと自由というスパイと共に新鮮なネタを喰らう…
勢い良く第一弾を食べ終えると残りの8貫が提供された。
これもサササッと粋に食う。
若干物足りなかったので、マグロの赤身を追加。
ササッと握って出してくれた。
俺は、そいつをササッと2貫一気に口へ放り込み茶で流し込んだ…
満足…
会計3000円でお釣り…このクオリティでこのコスパ神。
所用時間15分…
粋だな…
俺は、粋に肩で風をきり駅へと向かった…