噂の現場…秋葉原の老舗牛丼屋「サンボ」…

秋葉原の有名店 牛丼屋「サンボ」
秋葉原に牛丼の美味い店がある…
しかし、その店は牛丼の美味さ以上に…
一見さん殺しのマイルールが有名な店…
有名なのが、オーダーは食券機で食券を買いお茶が出てくるタイミングで渡す、携帯電話の使用禁止、ウォークマン禁止、私語厳禁、などなど…
ルールを破ると即退席…
厳しいルールを乗り越えた者のみが牛丼にありつける…
そして黙って黙々と牛丼を食べる…
そんな噂の現場…
あれは、数年前、夏の暑い日…
秋葉原で買い物を済ませた俺は、飯を食おうと店を探していた…
視界に入ってきた黄色店…
足を止める…
メニューを見つめる…
噂の牛丼屋…
この店が、ヤバいって噂は昔から小耳に挟んでいた…
店の前を通るのも初めてじゃない…
しかし、噂の所為もあって、今までこの店を避けていた…
店前に立っている店員が、不審そうに俺を見つめている…
ここで、このまま立ち去ったら二度と、この店に入れない気がした…
逃げるな俺…
「時は来た…それだけだ…」
俺は、意を決して店内へと入った…
食券を買い席に着く…
食券を渡すタイミングを待つ…
ミスが許されない…緊張で喉が渇く…
お茶が来た…
食券を渡す…
受け取る店員…
セーフ…
第一段階はクリア…
俺は、お茶を飲み気を落ち着けた…
心に余裕が出てきた…
店内を見渡す…
携帯をいじる人多数…あれ噂と違うじゃん…
俺もそっと携帯をポケットから取り出した…
しかし次の瞬間…
「携帯電話での通話お断りします」と書かれた貼り紙に気が付く…
あっぶね…
やはり携帯は、あまりいじらない方がよさそうだな…
携帯をポケットに仕舞おうとした瞬間だった…
背後に人影…
振り向くと、店員の女性。
ヤバい…怒られる…俺は身構えた…
「はーい牛丼おまち~」
凄く感じ良く牛丼を差し出された…
拍子抜けとは、まさにこの事だな…
調理室からも「いらっしゃいませ!」と感じの良い声が聞こえてくる…
どうやら噂は、尾ひれがつき誇張されていたようだな…
昔は、厳しかったのかもしれないが、今はマイルドなようだ…
俺は、胸を撫で下ろした…
気持ちが牛丼へと集中していくのがわかる…
牛丼を七味と紅ショウガで彩った…
肉と米を、口いっぱいに頬張る…
玉葱と肉と米の甘味とタレの味が、弾けて混ざった…
美味い…くっそ美味い…
牛丼のお椀がパワーボールと化し満月に見える…
心が大猿になる…
俺は、黙々と牛丼を胃へと放り込んで行く…
口に残った牛丼の余韻を楽しみつつ、味噌汁を胃へと流し込む…
そして思った…
私語が厳禁なんじゃない…
この牛丼の美味さの前に、人々は言葉を忘れ黙々と食べているのだと…